今回はNASをやめておいたほうが良い理由ついて解説します。私は以前に、SynologyのNASを約2~3年程度実際に利用したことがありますが、今はNASの電源を切ってしまい全く利用していません。
今回はなぜ私がNASをやめたのか、どうしてNASはおすすめできないのかということを解説します。
結論
とにかくプレビューや再生が遅い
NASの利用をやめた一番の理由が、動画ファイルの再生やプレビュー表示がとにかく遅いことです。特に、外出先からスマホで子供の動画を見ようとした時など、読み込みのグルグルが表示されるばかりで、なかなか再生が始まらず非常にストレスを感じました。
動画のストリーミング再生は、実は保存されているファイルをただ配信するだけでは快適に実現できません。ファイルをスムーズに再生するためには、再生する端末(スマートフォンやタブレット)の性能や、その時の通信速度に合わせて、最適なデータ形式に変換しながら送り届ける必要があるからです。
しかし、ほとんどの家庭用NASに搭載されているCPU(プロセッサ)は、データの保存管理に特化した省電力なものであり、動画の変換処理のような重たい計算を行うだけの処理能力を持っていません。
一方で、Google DriveやDropbox・pCloudなどの商用クラウドストレージサービスでは、アップロードされた瞬間にサーバー側の高性能なコンピュータが最適な形式に動画を処理してくれます。そのため、私たちは何も意識することなく、快適に動画を楽しむことができるのです。
エンコードとは?
動画や音声のデータを、特定の目的に合わせて圧縮したり、形式を変換したりする処理のことです。
NASで動画を快適に見るためには、この「エンコード(トランスコード)」処理をリアルタイムに行う必要がありますが、これにはゲーミングPC並みの高い処理能力が必要となることが多く、数万円程度のNASではスペック不足になりがちなのです。
セキュリティリスクの管理が面倒、高リスク
NASは、セキュリティ管理がとにかく大変でした。家庭用NASは「誰でも簡単に使える」という触れ込みで販売されていますが、その実態はLinuxなどのOSがインストールされた立派な「サーバー」です。
特に、外出先からスマホで写真を見たりするためにリモートアクセス設定を有効にしている場合、そのNASは絶えずインターネットに接続され、世界中の攻撃者から常に狙われている状態になります。
もちろん、NASメーカーも対策をしていないわけではありません。新たな脆弱性(セキュリティ上の欠陥)が見つかるたびに修正パッチを配布しています。しかし、スマホのアプリのように勝手にアップデートされることは稀で、ほとんどのケースではユーザー自身が管理画面にログインし、手動で更新作業を行う必要があります。忙しくて放置している間に被害に遭うことも珍しくありません。
また、ゼロデイ攻撃と呼ばれる、メーカーさえも把握していない未知の脆弱性を突いた攻撃のリスクも無視できません。
実際に2022年には、QNAP製のNASを標的とした「DeadBolt(デッドボルト)」というランサムウェアが世界中で猛威を振るいました。この攻撃の恐ろしい点は、ユーザーが強力なパスワードを設定し、当時の最新のセキュリティパッチを適用していたとしても被害に遭ってしまったことです。
攻撃者は未発見の脆弱性を突き、NAS内の全ての写真や動画を暗号化し、復元のために身代金(ビットコイン)を要求しました。
個人が自宅にサーバー(NAS)を設置してインターネットに公開するということは、こうした世界中のハッカー集団や自動化された攻撃ボットとの攻防を、自分一人の力でやり続けなければならないということを意味します。「セキュリティのプロが24時間体制で監視しているクラウドストレージ」と「個人が片手間で管理するNAS」、どちらに大切なデータを預けるべきかを考えてみると、どう考えても、クラウドストレージの方が良いと考えました。
実は高いランニングコスト
よくNASは一度購入してしまえば、それを使い続けるだけでクラウドストレージの月額料金から解放されて、コスパが良いという宣伝文句で販売されています。しかし、実際には、NAS本体はもちろん、内蔵のHDD、バックアップ用に接続しているHDDにも寿命が存在します。
そのため、実際には数年に1回はNAS本体とHDDの買い替えが必要になります。例えば、一般的な2ベイのNASを5年間運用した場合のコストを試算してみます。
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- NAS本体代: 約35,000円(エントリー〜ミドルクラス)
- HDD代(4TB×2本): 約36,000円(NAS用高耐久モデル)
- 電気代: 約15,000円(24時間稼働、5年間)
- 合計: 86,000円
これを月額に換算すると、約1,433円になります。現在の Google Drive(Google One)の2TBプラン(月額1,450円)とほとんど変わらない水準で、「NASだから圧倒的に安い」とは、とても言えません。
👉 関連記事: 「NASの電気代は高い?月額・年間コストを消費電力から試算してみた」
さらにここには、「セットアップにかかる時間」「トラブル対応の手間」「故障したHDDの廃棄処分費用」などの見えないコストは含まれていません。自分の時給を考えれば、実際のコストはもっと跳ね上がります。「無料で使い放題」と思われがちなNASですが、ハードウェアの償却期間と維持費を冷静に計算すると、実はクラウドストレージと大差ない、もしくはそれ以上に高くつくケースも少なくないのです。
クラウドストレージのコスパで勝てない理由
なぜ、個人で構築するNASが、GoogleやDropboxのような巨大IT企業のサービスにコストで勝てないのでしょうか?答えは単純で、圧倒的な「規模の経済」の差があるからです。
クラウドストレージ各社は、HDDを数万台〜数十万台単位で一括購入するため、市場価格よりも遥かに安い原価で調達できます。また、データセンターでは空調や電力管理が徹底的に最適化されており、家庭での運用に比べて維持コストも極限まで低く抑えられています。一方で、私たちはHDDを家電量販店などの小売価格で購入し、高騰傾向にある家庭用の電気料金で運用しなければなりません。
さらに致命的なのが「RAID(レイド)」による容量ロスです。NASでデータを安全に守ろうとすると、2本のHDDに同じデータを書き込む「ミラーリング」を行うのが一般的です。つまり、4TBのHDDを2本(合計8TB分)購入しても、実際に保存できるデータ量は半分の4TBだけになってしまうのです。
ハードウェアの原価が高く、利用効率も悪い。この構造的な不利がある限り、個人がクラウドストレージのコスパに勝つことは非常に難しいのです。
また、最近では利便性の高いクラウドストレージサービスの中にも、買い切り型のクラウドストレージ pCloud があります。このサービスでは、一度契約してしまえば、月額のランニングコストがなく利用することができます。pCloudの詳細は以下の記事で解説しているので、参考にしてください。
pCloudの正直レビュー|料金・安全性・使い勝手と注意点を本音で解説
サービス終了が不安ではありますが、すでに10年以上の運用実績があるため、安心して利用することができます。
リモートアクセスの不安定さ
NASを利用すると気軽に出先からでもデータにアクセスすることができるという宣伝文句がありますが、実際には出先からのアクセスはかなり不安定です。
確かに、専用ソフトウェアやアプリで各種設定をしてからしばらくは、多くの場合は全く問題なく出先からもアクセスすることはできます。しかし、ある程度利用していると、いつの間にか出先からアクセスできなくなるということが頻繁に発生しました。
一度そういった問題が発生してしまうと、原因の特定が非常に困難です。家に帰ってNASを再起動するまで直らないこともあれば、ルーターの設定を見直さなければならないこともあります。「今すぐこの書類が見たい」という急ぎの場面で繋がらないことが多く、かなり精神衛生上も良くありません。
リモートアクセスが不安定になる要因
なぜこれほど不安定なのでしょうか?その原因は、複雑なネットワーク環境にあります。
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- IPアドレスの変動: 一般的な家庭のインターネット契約では「グローバルIPアドレス」が固定されていません。ある日突然IPアドレスが変わってしまい、外部からNASを見つけられなくなることがあります。
- ルーターの二重化: 最近のマンションやプロバイダでは「v6プラス」などの新しい接続方式が採用されており、ポート開放がうまく機能しないケースが増えています。
- 中継サーバーの不調: 多くのNASメーカーは、設定を簡単にするために自社の中継サーバー(QuickConnectなど)を経由させていますが、このサーバーがダウンしたり混雑したりすると、自宅のNASが正常でもアクセスできなくなります。
Google Driveなどのクラウドストレージであれば、世界最強レベルの安定した回線で24時間365日いつでもアクセスできます。個人の自宅回線に依存するNASとは、信頼性の次元が違うのです。
PCのファイル共有で十分
動画ストリーミングが現実的に難しい、リモートアクセスが不安定だからあまり信用できない、ということになってくると、結局は自宅内のファイルサーバとしての利用になります。
しかし、最近のWindowsやMacでは、標準機能で非常に簡単にファイル共有ができるようになっています。
わざわざ数万円もするNASを購入しなくても、大容量の外付けHDD(USB接続)をメインのPCに繋ぎ、OSの標準機能である「フォルダ共有」設定をオンにするだけで、他の家族のPCやスマホからアクセスすることが可能です。
「PCの電源を常に入れておかなければならない」というデメリットはありますが、NASも結局は24時間電源を入れっぱなしにする小さなPCです。電気代や管理の手間を考えれば、既に持っているPCの機能を活用する方が合理的でした。
特に最近のPCは省電力性能も向上しており、「Wake on LAN(ウェイク・オン・ラン)」などの機能を使えば、必要な時だけ遠隔で電源を入れることも可能です。家庭内でファイルを共有するだけなら、NASは必須ではありませんでした。
買い切りクラウドでよかった
NASの一番のメリットは、月額のサブスク支払いからの解放でした。
最近では、クラウドストレージサービスの中にも買い切りプランを提供しており、契約時にNASと同じかそれより安い金額を一度支払うと、99年間は追加の支払いなしに利用できるクラウドストレージサービス pCloud があります。
pCloudであれば、自身でセキュリティ管理する必要や、リモートアクセスが不安定になることもありませんし、定期的に機器を入れ替える必要もありません。
確かに、pCloudサービスが終了してしまうこともあるかもしれませんが、NASが急に壊れてしまうことや、急にHDDの買い替えが必要になる確率よりかはむしろ低いと考えられます。


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