バックアップが進まない原因と基本方針
Googleフォトのバックアップが進行度0%のまま動かない、準備中の表示から切り替わらない、Wi-Fiなのに遅すぎて実用にならない。こうした悩みは珍しくありません。やみくもに再起動を繰り返すよりも、原因を一定の順序で切り分け、再現性のある対処を積み上げることが解決への近道です。本稿では、アカウントの空き容量、通信環境、端末の省電力やバックグラウンド制限、アプリやOSの不整合、問題のあるメディアファイルという五つの観点から、実務で役立つ手順をまとめます。対象はAndroid、iPhone、PCのいずれにも及びます。
アカウントの空き容量を確認
最初に確認すべきはアカウントの空き容量です。GoogleフォトはGoogleアカウントの総容量に依存しており、Gmail、Drive、Photosの合算が上限に達していると、バックアップは原則として進みません。写真や動画を削除しただけでは空き容量が実際には増えないことがあります。
ゴミ箱に移動しただけの状態では容量を消費し続けるため、ゴミ箱を空にする操作まで必ず行ってください。Driveに放置された古いアーカイブや、Gmailの大容量添付を整理すると大きく空きが戻ることが多いです。それでも不足する場合は、アップロード品質を保存容量の節約に切り替える、もしくはGoogle Oneで容量を増やす選択が現実的です。
通信環境を見直す
容量に問題がないと確認できたら、通信環境を見直します。自宅やオフィスでも、混雑した2.4GHz帯に接続していたり、VPNやプロキシを経由していたり、公共のWi-Fiを使っていたりすると、上りの帯域が不安定になりやすく、バックアップは途切れがちになります。5GHz帯に切り替え、ルーターを再起動し、可能なら別回線で挙動を比較してください。
企業や学校のネットワークではSSL検査や認証プロキシが同期の妨げになることもあります。家庭の回線で一度試すと原因の切り分けが容易です。PCでDrive for desktopを使っている場合は、アプリ内のネットワーク設定でアップロード帯域の上限が設定されていないか、一時停止が有効になっていないかも合わせて確認します。
省電力・バックグラウンド制限の解除
次に着目すべきは省電力やバックグラウンドの制限です。画面を消した直後に転送が止まる、夜間にほとんど進んでいないといった症状は、ここが原因であることが非常に多いです。Androidではアプリごとのバッテリー最適化を解除し、バックグラウンドデータの許可を有効化します。
データセーバーを使っている場合は、Googleフォトを例外に登録します。iPhoneでは低電力モードをオフにし、設定の一般からAppのバックグラウンド更新をオンにして、Googleフォトに写真へのフルアクセスが与えられているかを確認してください。大きな動画の同期は、充電中かつWi-Fi接続の状態でアプリを前面に置いておくと通りやすく、体感の速度も安定します。
アプリやOSの不整合・キャッシュ異常
ここまでの対応でも改善しないなら、アプリやOSの不整合やキャッシュ異常を疑います。GoogleフォトとOSの双方を最新に更新し、アプリを再起動したうえで端末自体も再起動します。Androidではアプリ情報からキャッシュを削除すると改善するケースが多く、iPhoneでは一度アンインストールして再インストールすることでキャッシュが刷新され、処理中や再試行のループから抜け出せることがあります。
問題のあるメディアファイルを疑う
それでも詰まる場合は、問題のあるメディアファイルの存在を考えます。破損した動画、一般的でないコーデックの動画、極端に長いファイル名、または特殊な記号を含むファイル名はエラーの温床です。対処の基本は、同期対象を小さく分割して原因の塊を特定することです。日付やアルバム単位でフォルダを分け、まずは数十枚程度の小さなブロックでアップロードして挙動を確認します。
問題のブロックを見つけたら、その中の動画をPCに退避し、汎用性の高い形式であるH.264とMP4に再エンコードします。ファイル名は短くし、半角英数字を中心に整えるとよいでしょう。一括レタッチアプリの処理によってEXIFが壊れ、そこから失敗が連鎖していることもあります。その場合はオリジナルに戻すか、別アプリで再書き出しを行います。
PC中心での運用ポイント
PC中心で運用している場合は、Google Drive for desktopの設定を改めて総点検します。バックアップ対象のフォルダが意図どおりに指定されているか、処理が一時停止の状態になっていないか、アップロード品質の選択が方針と合っているかなどを確認します。外付けドライブを対象にしていると、スリープや電源供給の不安定さがボトルネックになりやすいので、接続の安定化やスリープ動作の見直しも有効です。
現場で成果が出やすい順序
以上を踏まえると、現場で成果が出やすい順序は明確です。
- 第一に空き容量を確保し、ゴミ箱まで空にします。
- 第二に5GHz接続かつVPNやプロキシを外した安定した回線を用意します。
- 第三に省電力やバックグラウンドの制限を解除し、できれば充電中に処理させます。
- 第四にアプリとOSを最新化してキャッシュを刷新します。
- 第五に対象を日付やアルバムで小分けにし、問題のあるファイルを特定して再エンコードまたは除外します。
- 第六に必要に応じてPC経由で段階的にアップロードします。
この順番で淡々と潰していけば、多くのケースは再現性をもって復旧します。
安定運用のための予防策
運用を安定させるための予防策も併せて記しておきます。夜間や充電中に自動で進む環境を整え、月に一度はフォト、Drive、Gmailの容量を棚卸しし、ゴミ箱を空にする習慣をつけます。撮影設定で過度に高いビットレートやフレームレートを常用しないことも、詰まりの回避に効果的です。旅行やイベント後は、日付ごとに分けて順次同期するだけでも失敗率は下がります。重要な写真は別のクラウドやNASにも重ねて保存しておくと、万一の際の復旧が容易になります。
よくある疑問と短い答え
最後に、よくある疑問に簡潔に触れます。
- 準備中から進まない場合は、空き容量の不足、省電力やバックグラウンドの制限、キャッシュ異常の三点を疑ってください。
- iPhoneで画面を消すと止まる場合は、低電力モードとバックグラウンド更新の設定見直しで改善することが多いです。
- PCで極端に遅い場合は、Drive for desktopの帯域制限や一時停止、VPNやプロキシの影響が典型的な原因です。
- 特定の動画だけが失敗する場合は、コーデックやメタデータの破損が濃厚で、再エンコードとファイル名の整理が有効です。
結局のところ、原因は多岐に見えても、対処の順序は一定です。上から順に確実に潰していくことで、進まない状況は着実に解消できます。

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